旅をしている人
田原 晋

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青蔵鉄道とラサ、北京の旅0709

1・ツアーの仲間

 西遊旅行のツアー、東京・大阪からほぼ同数の21名。これに添乗員の大島さんとう構成。若い30~40代の女性もいらっしゃるが大半はこちらと同年輩のリタイア組。それぞれが青蔵鉄道のテレビを見ての参加で、こちらと同じく何時もは旅の仕方が少し違っているという方もいらっしゃる。それも含めてその生き方は、リタイア後の過ごし方のヒントがあるようだ。ご迷惑はかけないように紹介したい。もし失礼があったらお許しください。
 ご夫婦は2組。こちらも悪いのだがどうも一組と見てしまうし、実際に何時も二人でいらっしゃって周囲に影響を与えることが少なく、その分グループの中で影が薄くなる。お一人の奥様には友人がいらっしゃってその2人の時はもっと違う印象になる。もし友人同士でお越しならもっと違う人格になられたように思った。
 というように女性の方には、友人同士の方が2組あった。もう10年来の旅仲間という40代3人連れは、何時もならオリジナルな旅を自分たちで企画するのだとのこと。もう1組は高校の仲良し30代、有休はすべて旅になるそうで仲間はもっと多いらしい。この2組がにぎやかで若々しく、やはりグループの中心になっていた。
 もう一組男性の4人組、同じ印刷会社の3人と取引先の1人。仕事が趣味になるようで、経典の印刷に興味を持っておられたし、中のお一人は西夏文字に興味を持ちその研究書まで執筆なさっていた。このように興味がはっきりした方たちは話をしていて教えられることも多く楽しかった。
 残りは一人参加、山登りが趣味というのが男2名女性1名。今回は下見も兼ねて山で知り合った奥様とカトマンズまで歩いてみたい、5年以内に実現しないと無理だろうとのこと。ランドクルーザーでのツアーはあるがそれは嫌だし、そんな道も嫌だとのこと。そういう人生には頭がさがる。もう一人は山だけでなく世界への旅もあちこち出掛けておられて、ぼそっと話される内容に感心する。女性の一人は生活のすべてが趣味の山にあるようで、そのために水泳もやっているとのこと、百名山は好まないそうで登る山も中央アルプスと決まっている。とはいえこのような1点集中の方は少し我がままでもある。
 こういう方に囲まれると、ツアーをビデオでまとめるのが趣味なんて言う男性は黙ってしまわれる。むしろおひとりさまで、旅好きが高じて大学の聴講生になったという発想はその素直さが東京の人という感じでうれしいし、普通の生活の中で趣味をたくさん持っていて、お遍路さんから山登りと旅なら何でも好きで、この鉄道に乗りたいと参加してきた68歳の発想はいかにも大阪のおばさんとう感じがした。

5年ぶりのツアーは教えられることが多かった。ツアーはダメで、旅ならひとり旅だという発想も無知な意見だと思うが、といって忙しい毎日が連続するツアーの旅しか知らない方には、仕事ではないのだからもっとゆっくりボォーとなさったらいかがと申し上げたくなる。


2・チベットの悲しみ

 チベットはチベット自治区だけではありません。青海省も甘粛省四川省雲南省の一部もチベット(文化圏)なのです。ここは仏教の地、インドの仏教が衰退してその教えのすべてがここに来ました。つまりインドチベット仏教は、仏教の真髄がそのものです。ここから中国そして日本へとその教えが広がっていきました。だからここにはその原点が今も生きているのです。ポタラ宮を案内するドルチェさんの案内は次第に熱を帯びてくる。
 確かにその建物全体が曼荼羅、仏教の世界を表現するものになっている建物、内部を埋め尽くす仏像や布画、壁画はその原点をほうふつさせてくれる。日本ではめったに見ることのできない男女交歓仏もある。エクスタシーと悟りの境地の通底がそのまま表現されている。想像上の仏さまから現世のダライラマの生活の場までが、切れ目なく続く。
 ここは祈りの場なのです。皆さんに見てはもらっていますが観光の場ではなく、信仰の場です。だから来年の5月からここは閉鎖して本来の場に戻すことになっています。代わりに博物館を開いて、それを見てもらいます。「へぇ知らなかった。そうなの、じゃぁ私たちが最後なのね、知らなかったけど、ほんとうにいい時に来たことになるのね」
 ドルチェさんの目は、すでにそこが祈りの場となっている状態を見ている。顔つきも変わって修行僧のようだ、実際に修行もしたのこと。「本当にそうなの?中国政府の了解も得ているの?反対はないの?」後でそっと聞いてみたのだが、いやもう決まっているのです。そうなります、と自信たっぷり。「誰も反対しないの?」いえ、お坊さんの中に反対の方もいるのですが納得してもらわないといけません。
 熱心な信者の立場からは当然だろうと、応援をしたくなってしまう。こちらは、もう見たことだし。でも世界遺産のポタラ宮を閉鎖するとは、大変なことだ。中国政府の了解も、世界中の旅行業者の了解も取り付けねばならない。その話は、まだ日本の旅行業者の知るところでないとすれば、ちょっと無理な気もする。なにしろ来年は北京オリンピック、国家の威信をかけて実施しようとしている時に、それはまず了解されないのではないか。
 チベットはかって王国であった、吐蕃から仏教政権、ダライラマの統治。中国に統合され、1959年に暴動があったが、以後は自治区として平穏だ。現在、人口の大半は中国系でチベット人は40%に過ぎない。1万人の解放軍が常駐し、道路が整備され軍用の飛行場もある。政治も経済も動かしているのは中国系の人だ。政治的に何か考えることはもう不可能だ。立派な国立博物館もあって、そこの説明では中国の歴史の一部として語られている。
 だとしたら、チベットの人たちが自分たちのアイデンティティを信仰に求めようとするのは当然だろう。だがチベットの中にはイスラムの信仰も盛んだ。ドルチェさんの熱心さの中に、チベットの深い悲しみを感じた。ポタラ宮を出たところで、日本人の若者数人が彼を待っていた。昨年お世話になったとのことで、わざわざお礼を言うためにやって来て、再会を喜び感謝していた。若い人たちを魅きつける力があるのだと、あらためて彼の熱心な説明を思い出していた。

                                        以上

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