旅をしている人
田原 晋

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屋久島への旅0711

0-1.旅の前に いつか屋久島に行ってみたいと言うと、急いだ方がいいと友人が言う。縄文杉を見る山登りは往復10時間かかるから年齢を考えると早晩行けなくなるという、すでにダメかもしれないがともかく行くことにする。観光協会にメールすると月末までが観光シーズンという、ともかくチケットをおさえる。帰りは行ってから決めればいいだろう。
0-2.ということで観光協会のホームページを見て、宿泊先を探す。そして以下のメールのやり取り。
*つわんこ さま 
26日月曜・午後13時30分空港到着の便にて、そちらに参ります。当日(ないしはもう1,2泊)泊りたいと思いますが、だいじょうぶでしょうか? ・70代のじじい一人です。 ・翌日できたら、縄文杉にトライしたいと思っています。(自信はなくて、途中であきらめるかもしれませんが、ともかく) ・その他やくすぎランドなど、初めての屋久島をゆっくりとまわりたいと思っています。 ・観光協会の案内、いろいろ見ましたが、やはりお宅だろうと、メールをしました。だめならば、なるべく早くご返事ください。
*田原様  Sent: Thursday, November 22, 2007 11:57 AM
こんにちわ 数ある屋久島の宿の中より癒しの館『つわんこ』をお選び頂き有り難うございます。
  >観光協会の案内、いろいろ見ましたが、やはりお宅だろうと、メールをしました。
嬉しい お言葉を見て 思わずにっこり(^^)いたしました。明日からは、満室になっておりますが・・26日からは、部屋は、いくらでも空いておりますので 大丈夫です。ご予約承りました。 有り難うございます。m(_ _)m お食事は、いかが致しましょう?2食付きと言うことで宜しいでしょうか?空港までは、お迎えに行けませんが・・バスでいらしたら 「牧野」で降りていただいて お電話頂ければバス停まで迎えに行きます。では・・・お会いできることをお待ちしています。
・民 宿 : 癒しの館『つわんこ』 代表者:満園 茂(ちょんまげさん) 女 将:満園 啓子
*つわんこ 満園茂 さま
早速にご返事いただいて恐縮です。はい、食事つきでお願いします。着いてからのことですが、山登りのガイドさんなどご紹介ください。では、お目にかかるのを楽しみに。田原

1.11月26日(月) 
  JEX2405便 大阪伊丹10:00→鹿児島11:15   JAC3747便 鹿児島12:55→屋久島13:30着
                 *運賃 シルバー割引/18,450円+9,550円 合計 28,000 円 
 大阪空港から出発、国内航空は久しぶり。チケットをネットで取ったのだが、25%引きのシルバー割引なるものがあることを知る。鹿児島空港で昼食・黒豚サンドに紅茶、屋久島便は水平飛行10分で到着。桜島が火口までよく見えた。他の乗客は迎えのバスやタクシーで消え、気付くとこちら一人がバス停に残る。観光案内所で地図などをもらうが、1時間半ほとんどをベンチで過ごす。これもまた愉快だ。
 民宿は庭の離れが客室で3室、思ったよりきれい。時間があるので、近くの町立屋久杉自然館へ送ってもらう。屋久杉博物館、巨大な切り株、縄文杉のビデオなど。売店食堂で甘酒をもらう、店番は脱サラの関東の人、そんな感じがしたので尋ねてみた、夫婦で引っ越したとのこと。帰りのバスは縄文杉ハイクからの人ばかり、達成感にあふれた上機嫌の顔だった。同宿は柳川からの女性ひとり旅のCさん、登山が趣味の本格派、明日ご一緒することになった。風呂は露天、朝自宅にいたとは信じられない別世界にいる。10時消灯。
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2.11月27日(火)縄文杉ハイク
 朝4時に起こされお弁当を2つとヘッドランプを渡され、バス停(昨日の自然館前)まで送ってもらい5時のバスに乗る。残念ながら雨模様だが満席。途中からさらに小さなバス2台に乗り換えて登山口まで。5時45分に出発、ここに夕方5時に帰ってこないとバスがなくなるとのこと、暗い中を出発させるとはうまいやり方だと感心する。若い人がほとんどだが、年配のグループもいてちょっと安心する。
 道はトロッコの軌道、ヘッドランプのあかりを頼りにうつむき加減に枕木と土とを確認しながら歩く。鉄橋、谷は深そうだが暗くて見えないので助かる。廃校になった小学校跡を過ぎる頃にようやく明るくなる。レールも中央に板が敷かれて少し歩きやすくなる。グループの先に出るが、前の若者が見えなくなりCさんにも先行してもらって、周囲に誰もいなくなる。歩いても歩いても同じような景色、間違いはないとは思うが不安になるほどだ。大きなヒキガエルに出会い写真を撮る、何年ぶりだろう。
 3時間近くたってやっとトロッコ道の終点、先に行ったCさんが待っていてここでお弁当を使ったとのこと、こちらも雨の少ない木陰にすわって朝食にする、30分休憩して9時出発。ここからは急な山道。何時の間にか周囲は沢山の人、若者のグループにはすぐに離されるが、別の人が続いてお互いに声を掛け合って登る。若者の一人が意外に多く一緒に休んだりちょっと話したりする。材木の階段が付いていたり、道をふさぐ倒木をL型に切り取って踏み板にしてあったりと、ずいぶん整備されている。でも雨やしずくは何時も落ちてきて、こちらのコートはすっかり水を吸って背中が冷たい。休むと余計に寒いし、濡れた場所に座り込む気にもならなくて、結局先を急いでしまう。カメラを取り出す回数もめっきり少ない、それでも鹿と猿に出会う。お天気ならもっとゆっくりしたのだろうが、それが幸いしたのかウイリアム株、大王杉夫婦杉と続いて、途中であきらめる気にはならなかった。やがて先行組が降りてくる、Cさんにもう一息と言われてがんばる。
そしてあっけなく縄文杉の目の前に出る。11時、運悪く降りは一段と強い。ゆっくりと眺める気分にならない。触れることはできないし、見るには遠い、撮るにはアングルが低すぎる。杉と心を通わせるなんて、とても不可能だ。若い人の写真を撮ってあげ、こちらも撮ってもらう、真似をしてやぁと手をあげてみるがどうも落ち着かない。しばらく歓声をあげる皆さんを見たり杉を眺めたりしたが、することもなくなって下りることにする。もう来ることはないと思いながら、結局10分くらいしかいることができなかった。結局こちらの縄文杉についての思いは、目の前ではなくその前や後で考えたことばかりになってしまった。
ゆっくりと思うのだが、それでも下りは早い。大株の中に入り込んだり、案内のあった散歩道に寄ったりしたが、雨はやはり道を急がせる。何より、よくもまぁこんな道を登ったものだと自分に感心する。濡れた木の階段は何度か足をすべらせヒヤリとする。後でガイドもする宿のご主人が、事故の90%以上は下りで起こるのだと言われる、無事に降りれたのはラッキーだったのだろう。唯一屋根のある学校跡の休憩所で、濡れたシャツを換え用意の食べ物を取り出すが、若いカップルに追い立てられるような気分になってしまう。バス停到着は14時20分、上りより1時間も早い。バスもすぐに出発、宿に着いたのは16時半、Cさんとは1時間違い、9時間40分・33,000歩の行程だった。
コーヒーが出てきて感激する、お湯をもらって用意のそれをたてようと思っていたのだ。入浴、食事、持参のシップをはりまくって、寝る。
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11月28日(水)ヤクシマランドと仁王杉
 柳川のCさんが8時出発、写真を撮りあって見送る。お連れ合いは何時ものように家で留守番とか、やはり自分のお金がある有職ならではの自由なのだろう。こちらはゆっくりと朝食、部屋でノート、昨夜用意してもらった軽のレンタカー(2日で1万円)で出発。雨模様、この天気がここでは普通のようだ。
 ヤクシマランド、遊歩道のついた自然観察森。ここをゆっくり歩こうという魂胆、30分から150分コースまでありもちろん後者、周囲は誰もいなくてすぐに深山幽谷。それにしても、昨日といいここといい切り株や倒木だらけ、あちこち伐採しまくった乱暴狼藉の跡だ。江戸時代、屋根板を取るために幹のまっすぐな部分だけ取り後はそのままにしたとのこと、普通なら荒地になった筈だ。それが高温多雨のおかげで、苔がおおい新しい木が育って緑豊かな島になっている。私たちはうっそうとした森と言うより若木も多い再生の状況を眺めている。頂上の東屋で休んでいると茨城からの母娘が若い女性のガイドさんとやってくる。さらに川沿いでも休む、ここでは一人でゆっくりする。出入り口付近は結構な人、けっきょく3時間近く過ごした。
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 そこからさらに奥の紀元杉へ、3000年という肌に触れる。写真を撮っていたら沖縄の青年がやって来る、着いてともかくやって来たと言う、そういう思い入れを呼ぶ場所なのだとうれしくなる。
 宿に帰って、まだ時間があると温泉へ行く、尾之間温泉200円。夕刻お年寄りが多い、皆さん挨拶をしている。平屋だが、浴場は半地下になっていて天井が高く気持ちいい。湯船はコンクリートだが底は丸いごろごろ石、木造の屋根裏、おそらく屋久杉の壁板がうれしい。熱いお湯で、長くは浸かってはおれなかった。
夕食はまたまた食べきれないほどの用意、それが意図されているようだ。

11月29日(木)屋久島ぐるり
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 宿の支払いを済まして、出発。まず空港近くで見つけた喫茶店でコーヒー、客は2人コーヒーを飲んでいた。品のある女主人(これは後述)。いちばんの集落、宮之浦でスーパーがあったので入ってみる、結局ここでの買い物が唯一のお土産になった。店の後ろの海岸に行って、しばらく波を見る。環境文化村センター(博物館だが、呼称がなんとも変だ)で呼び物の大型スクリーンを見る。実物以上に縄文杉をきちんと見たような気になる、おもろいものだ。もう午後1時、食堂がないまま走って、海がめの海岸に出る、カップルがいて写真を撮りあう。ガソリンを補給、隣の店でパンなど購入、教えてもらったレストランはなんと休み。そのまま西側に入ってしまい、灯台そして林道、鹿と猿に出会う。ガジュマルの樹のある集落。
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そして海中温泉、岩場で衣服をぬいで入る100円。客は多く、土地の人と観光客が半々、女性もいる。ここはぬるめで長時間いれる。なんと民宿のご主人もいる、どうやらこちらを待っていたようだ。
気がつくともう時間がない。信号で2台をぬく猛スピード運転。空港前の給油所にいると、後から来た車に叱られてしまった。車は言われたとおりカギをかけずに駐車場に乗り捨て、カウンターへ飛び込む。チケットを買うと同時にもう搭乗というあわただしさ。やはり、この行程はこちらには無理であったようだ。
明日も同じような雨模様の天気だし、3時間足らずで1周できると言われて、遅い到着の神戸便に乗れるのも魅力だと、ついその気になったのだが、当初は確かもう1泊する筈だったのだ。
 JEX2405便 屋久島10:00→鹿児島11:15   JAC3747便 鹿児島12:55→神戸13:30着
団体客もいてほぼ満席の神戸便、神戸のあかりが見える。モノレールで三宮、夕食の弁当を買って帰る。最後はなんとももの悲しい終わり方でございました。

[費用]
・ 航空機 片道28,000円、往復56,000円
・ 宿泊  (1泊2食付で8,000円)25,100円
・ レンタカー軽48時間(保険込み)10,800円 ガソリン代 1,764+952 小計 2,716円 合計94,616円
・ その他、入場料・食事・喫茶など                  約10万円     以上

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