旅をしている人
田原 晋

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地中海の旅

(紹介)
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 フェルナン・ブローデル(1902~1985年)「地中海」の帯には、「20世紀の最高の歴史家 不朽の名著、決定版完結  近代世界システムの誕生期を活写した『地中海』から浮かび上がる次なる世界システムへの転換期=現代社会の真の姿(全5冊)」とあるのですが、この解説から必要ですね。
 この本(原題は、フェリーペ2世時代の地中海と地中海世界)は1550年から1600年までのわずか半世紀のことを描いているだけです。日本なら関が原の前の50年間。この時期を境に、ヨーロッパ世界は地中海中心から大西洋から世界全体をとらえるものへと変わっていく、その転換期を描いたという訳です。事件としてはレパントの海戦でトルコが敗れ、新教とカソリックの戦争がナントの発令で終了、英がスペイン無敵艦隊を破り海上支配権が変わる、という時期~。こう書くと歴史好きの方はもうわかった気になると思いますが、それは「出来事、政治、人間」に過ぎないとして4と5にまとめられています。
歴史はそれだけではなくもっとゆっくりと百年単位で変化していくものがある。それが2と3の「集団の運命と全体の動き」で、人口や情報の伝達の方法、通貨のもとになる金や銀の供給と価格の変化、それによる商業と物流、なにより食料はどういう状況にあったか。国家とはどういうもので何をしていたのか、そして戦争とはどうゆうものであったかを見せてくれます。
さらにその舞台である地域はどういう状況にあったのか。山や平原そして海は、島や半島はどうであったか。地中海にはどこまでの地域が関連しているか。人はそこでどのように生きていたのか。気候と歴史。都市と交通路。ゆっくりとしか変化しないことが、「環境の役割」として最初の1にまとめられています。
つまり全5巻は①3つの尺度で世界を眺めることの必要性、また②国単位の歴史では世界をとらえることはできないことを示して、歴史の概念を変えてしまった。それが不朽の名作と言われる理由です。
また彼は第2次大戦で捕らえられ、その捕虜生活の中で記憶だけで第1稿が博士論文として書かれたことも、大きな話題を呼びました。1949年自費出版、1966年第2版発行。
わが国では1991~95年にかけて翻訳(浜名優美)発行され大きな話題を集め、手に入れやすい普及版(当方が求めたもの)が2004年に発行されました。巻末には各界の専門家による解説や感想が加えられていますが、それだけをまとめた「地中海を読む」も発行されています(1999年)。

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