旅をしている人
田原 晋

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本の旅

  また面白い本を見付けてしまった。副題に「若者と観光メディアの50年史」とあるように、若者を中心としてきたこの国の海外旅行の状況をメディアと関係づけて見事に切り取ってみせている。表紙裏にある紹介文をそのまま書き写してみる。
「最近の若者は海外旅行に行かなくなった」といわれて久しい。二十代の出国者数は1996年にピークを迎え。十年あまりで半減した。それを若者の変化だけで問題化するのは正しくない。海外旅行の形も、大きく変わってきたのである。本書は「何でもみてやろう」「地球の歩き方」「深夜特急」「猿岩石」など、時代を象徴するメディアとそれらが生まれた社会状況を分析し、日本の若者が海外をどう旅してきたかを振り返る。そして現在の海外旅行が孕む問題の本質を、鮮やかな社会学的アプローチで明らかにする。

  著者が「地球の歩き方の歩き方」の共著者であったことを知り懐かしく思ったのが、こちらはそういう本を読むことで旅にあこがれ、やっと自分の時間を持つことができて旅をスタートさせた時期が、ちょうど若者の海外旅行が減少していく中であったようだ。道理でと思い当たることも少なくないが、旅とは本来的にその時代の言説や風潮、つまり日常に反抗することで出かけるものだという本質は失いたくないものだ。

また最近の海外旅行で欠かすことのできない現象、例えば、定年退職者を初めとする高齢者の旅行、おばさんなど女性たちのツアー、大学の観光学科(当然、若者が学んでいる)、観光が国の重要政策になっていること(観光客誘致政策)、などについても目配りして欲しかった。

ともかくたまたまのことだがこのブログで紹介した、加藤仁「定年からの旅行術」(現代新書)、高城剛「サバイバル時代の海外旅行術」(光文社新書)と合わせた3冊がお互いを補いあって、この国の現在の海外旅行を語っているように思う。

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