旅をしている人
田原 晋

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台湾で思ったこと

2013年2月19日

台湾の旅1301~02

台湾で思ったこと
2013.01.23.~02.02. 台南~鵝鸞鼻~斗六~台北

1.私の生きてきた時代

今回の旅でいちばん強く感じたのは、見るものがほとんど私の生きてきた時間に重なっているということ。もちろん例外は沢山あるのだが、古いと言われ「老街」と呼ばれる街並みはほとんどが40年代つまりこちらと同年代、すべてが私の小さい頃に日本にもあった洋風建築だ。レンガ造、モルタルあるいは洗い出し仕上げ。棟には、花鳥の紋様と共にお店の屋号もかかげられて、それが未来永劫続くと信じられている。
そして、国全体がなんとなく昭和の感じがしている。繁華街の中心にデパートがあって、繁盛している。新生三越という日本資本だ、他にセブンイレブンや無印、ハンズ、ユニクロもあった。繁華街は混雑して、ひとりであることを忘れさせてくれる。そこにいる人たちが、私の分身のような気までした。
また外食やテイクアウトが多いらしい生活習慣が、旅の者にはうれしかった。台北のデパ地下はさすがに大資本のチエーン店が目立ったが、それは仕方がない。気に入った店があると何度も行くのは何時の旅とも同じだが、台南でも斗六でも土地の人とテーブルをゆずりあって坐るのはうれしかった。並んだ料理をあれこれと選んだり、食べている人の料理を指さしでもらったりした。
また料理名を書いた一覧表にチェックをいれて注文するという方式が、一般化しているようでこれもありがたかった。漢字表記はなんとなく意味が理解ができる。
といってお米の名産地という西螺の町では、作り方すらまるでわからないお米の料理があって、名前の入った明細表を記念にもらった。碗粿や米糕という名前? 前者は、冷たいところてん状のものを碗に入れて固めたもので、蜜をかけて食べる。デザートのようなものだ。後者は、お米の粒が残った少し固いものをやはり茶碗で固めて盛ってある、こちらは温かく主食になる。どなたかご存知の方は、「粿」「糕」の違いや作り方など、ご教示ください。お店を出て歩き出したら、後ろから声をかけられ、もらわなかったお店の名物・青草茶を渡してくれた。ビン入り、炭酸をなくしたコーラのような味がした。
そういうサービスすら、昭和の時代にはよくあったことだと思った。

・老街と呼ばれているが、ほぼ40年代のもの。台南でも斗六でも西螺でも、台北・迪化街でも、ほぼ同じ感じだった。
IMG_3643台南の「度小月」という店。お客が多いと思ったら、有名店だったようだ。IMG_0001_3 jpg
・お店で渡してくれる、メニューを兼ねた注文書。台紙とボールペンがセットされている。

2.台湾の先進性

台南の国立台湾文学館は、ありがたいことに日本語の解説もついていて、思わず引き込まれた。 『すべての川の流れを受け入れる海のように、台湾はあらゆる訪問者を受け入れてきた。そこには悲しみ喜び愛と欲望、郷愁と異民族の抗争や融和や同化が行われてきた』とある。言われてみれば、先住民族という存在はあるが、いまやこの島の中心は渡来してきた人たちだ。だから自分を含め、すべてを平等に客観的に眺める目が、ごく自然に育っているように思った。なんともうれしい、日本人の私には何よりありがたい見方だ。
東アジアを旅していて、事あるたびに感じさせられる日本に対しての批判的な目が、ここでは少し違う。批判と同時に良さも認める、大人の判断を感じることができる。ここに来るまで知らなかったが、日本敗戦後、代わって統治した外省人に失望して猛烈な反対運動が全土に広がった「二二八事件」が起こっている(多数の死者も出ている)。それは日本をあらためて見る目を開いたのかもしれない。

今や世界は、国境など意味がないほどに交流している。国家というシステムが制度疲労している。その点この国は、それを先取りした先進的な地域ではないか、旅の最初の町、台南でそれを感じたことは、ありがたいことだった。
台北に帰って来て、二二八記念館のカフェが気に入った。窓から公園を望むカフェはゆったりして、空いていたので4人席を占拠してノートをひらいた。ふと気づくと、沢山のお客さんがいるのに、それはとても静かだ。皆さんにこやかに談笑しているのだが、大声も高笑いもない。静かな温かい空気だけが流れていた。うれしかったので、翌日も出掛けて今度は、お茶とケーキを注文した。これと似た感じは、一度シンガポールでもあったことを思い出した。アジアを喧騒と活気の町だけと理解するのは、ちょっと違っている。
・文学館の説明は「山海的召喚」「族群的対話」「文学的栄景」の3つに分けて説明されている。
・建物は、日本統治期のレンガ造の台南州庁舎の修復改造したもの。IMG_3438IMG_3441IMG_3459IMG_3451
・中に入ると扇型に広がる2棟の間に屋根をかけて空間を確保している。
・裏側から見る。
・二二八記念館のカフェIMG_3775

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