旅をしている人
田原 晋

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本の旅

日本文化の論点 宇野常寛  ちくま新書

前回の文章で最後に唐突に、内田樹さんを引き合いに出したのは、この本のことを書こうと思っていたからだ。
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最近目覚ましい活動をしている宇野常寛さんが、やっと印刷された文章で自分の立ち位置を紹介した。彼の挑戦的な言説が、なぜ生まれたか、何に向かって怒っているか、ようやく理解できた気がする。
1978年生まれならではの感性であり、分析であると感動した。上の世代としては、それを真面目に受け止めねばならない。最近のこの国は、思考することを放棄する傾向があるのだから、彼のような人が出てくるのは大変にうれしいことだ。

とはいえ疑問もある。ネットでの情報交換が社会を動かす中心的な役割を負うようになることは、類推できるけれど、アニメとAKB(夜の文化)の成功だけで、これまでの文化(昼の文化)と対峙させようというのは、やはり無理がある。
長い人類の歴史の中で生まれた文化に対して、もう少し敬けんであっていいのではないだろうか。あなたの言う昼の文化自体が、すでに平面的な広がりを指向している。音楽も書籍もすでにネット化と切り離せないし、SANAAの建築など平面的な広がりを建築化していると見ることができる。

安藤忠雄にいた二川幸夫のような方が、宇野常寛にはいないのだろうか。それは大沢真幸でも宮台真司でも違う、せめて内田樹か高橋源一郎ではないだろうか。そんなことを思ったりした。

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