旅をしている人
田原 晋

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旅の記録, 201308~09 ブラジル

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2.オスカー・ニーマイヤーの建築  人間のサイズ

 

昨年末102才で亡くなったオスカー・ニーマイヤーの建築を訪ねるのが今回の旅の目的のメインだったが、あらためて、これが北半球にあったら、もっと高い評価になったに違いないと思う。

でも、南半球にいたから亡くなるまでこのデザインを続けることができたとも言えると、建築が土地に縛られていることを再確認した訳で、建築を語るにはやはり行ってみなければならないようだ。

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ブラジリアの中心部で感じたことは、行く前に思っていたよりはるかにそれは小さいというか高くない。国会議事堂は3階建てだが、車寄せの1階は地下に埋め込まれたようになっていて、歩く人は2階にたどりつく。26階建ての2つ並んだ高層ビルは、シンボルとしての塔の役割がメインで、オフィイスとしてはフロアーが狭く機能的にはとても思えない。周囲のメインの官庁も低く、池を持つ広い庭園に、そこに植えられた緑が、風景にやさしさをもたらしている。

また各地にある彼の建築は、いずれも人間のサイズを忘れていないというか、作品集で見た印象よりはるかに小さく気持ちよく裏切ってくれた。

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ニーマイヤーはコルビジュエの指導によって建築家として認められた。当時のコルビジュエは近代建築の5原則を提唱して、人間のためのデザインを強く意識していた。彼はその教えのままに留まって、以後の作品を作り出した。球体や三角錐など幾何学的な形体の作品も、当初はとても小さくモダニズムそのものだと言える。

一方コルビジュエは、その後自身の論説を裏切るような作品を作り出して(教会を2つ)、人間のサイズとは関係のない、自然の光を取り入れる空間を作り出して、新しい時代を先導した。

以来、北半球の建築は経済の要求するままに、人間のサイズとは関係なくどんどん巨大になっていった。建物だけでなく、その中に入るアートも音楽も大サイズ大編成大音量になっている。そして気付かないまま経済効率が要求する都市や世界を作り出すことになった。そして、人間性もまた変化し、疎外が問題になった。

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しかしこの地では、資本の要求が弱かったためかもしれぬが、人間のサイズを忘れていない趣がある。彼の作品も、晩年にははるかに大きくはなる。それでも幾何学的な形体は縦に伸びるより横へと延び、あるいはうねっていく。あくまで土地と離れることなくつながっているように思える。それが、ニーマイヤーの建築のもっとも大きな特長ではないだろうか。

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とはいえこの国も、現在経済が発展し、ワールドカップやオリンピックを迎えようとしていて、大きな転換の時期を迎えている。

 

人間は望んでいない世界を、なぜか一生懸命に作り上げているのではないだろうか。経済発展とか、国力の高揚とか、愛国とか、そういう目標がどうも間違いの根源のような気がする。

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今回見た、オスカー・ニーマイヤー(1907~2012) の建築 (見学順、数字は建築年)

 

1. サンパウロ     ・コパン アパートメント 建築年1950

2.リオ・セントラル地区・教育保健省  1937~43  (コルビジュエのアシスタントとして)

・ボアビスタ銀行 1946

3. ニテロイ(リオ近郊) ・現代美術館 1993~96

・文化センター・劇場・会議室 2007

4. ペロ・オリゾンチ  ・アパートメント  建築年?

5. ペロ・オリゾンチ・パンプーニャ湖畔/ 教会・スポーツクラブハウス

・カジノ・ダンスホール(現美術館)   1940~43

6.ブラジリア・国会議事堂・大統領府・最高裁判所・大蔵省・外務省   /三権広場     1958~60

7.ブラジリア ・カテドラル・メトロポリターナ 1958IMG_0001

・国立美術館1999~2006 ・国立図書館2007 ・国立劇場1958

8.ブラジリア・チャペル(教会)   1958

9.ブラジリア・大統領官邸   1956~57

10ゴイアニア・文化センター/ギャラリー・音楽ホール・記念館・事務所棟    2006

11.クリチバ   ・オスカー・ニーマイヤー美術館  1967,2002

12.サンパウロ・イビラブエラ公園/     美術館・音楽ホール 1951 (~2005)

13.サンパウロ・ラテンアメリカ記念公園  図書館・博物館・イベントホール・ 1986~92

 

 

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