旅をしている人
田原 晋

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旅の記録, 201407フランス

2)ポンピドー・メッス

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 メッス駅の裏側の周囲は、目下再開発中、数年後にはまたまるで違った風景になるのだろう。パリのポンピドー美術館の別館、ポンピドー・メッスは目の前、そのユニークな形を見下ろしながら、近づくアプローチが楽しい。

 すでに沢山の人、駅正面の閑散とした感じとは、まるで違う。チケットを求め、ロッカーへ行くところで日本人の青年に会った。やはりひとり旅、建築のお仕事らしい。まず坂さんの受賞(今年のブリッカー賞)を喜ぶ。私は仙台ですから、余計にうれしく思うとのこと。こちらも神戸だから、彼にはお世話になっていることになる。形態に集中するアトリエ系の方と違って、アフリカの難民や被災地の人たちに建築を届けることで有名な方だから、受賞とは縁がない方と思っていたと、お互いに感想を語り合う。だが、その気になればセンスのいい建築をつくる方であることは、東京の集合住宅(羽根木の家)を見たことのあるこちらは知っている。

 

 建築の紹介のコーナーがあって、他のコンペ応募作品とともに展示されている。何より、工事中の記録ビデオが楽しい。コンクリートの箱の上にやわらかいドームがかかっていく。ドームは後楽園と同じような材質だが、それを支えるのが太い木骨であるのが、坂さんならではの発想だと思う。夜には木骨の裏に照明が入って、それを透かして見せるようになっている。

 展示は、ポンピドーならではのピカソ以後の現代作家の作品。1階は半世紀が過ぎすでに巨匠と呼ばれるようになられた方たちの作品。2階に現代作品、こちらはほとんど知らない方ばかりだ。

さらに上階に細長い通路の正面が全面ひらいて、大聖堂のある旧市街を望むという設計が、いかにも彼らしいサービスだと楽しくなる。ゆっくり見て、カフェのカウンターで一休み、悪天候で屋外のテラスが使えないのが残念だ。

 最後に、絵はがきのビューポイントを教えてもらって外へ出る。雨の中、水たまりの荒れ地の中を歩き回わりながら、青空ならもっと美しいだろうと思う。

 パリに帰ると、ポンピドーの前にメッスの大きなポスターが掲げられていた。こう並べて見ると両者の共通する姿勢というか、コンペでこれが選ばれた理由もまたわかるような気がした。古い落ち着いた街の中に異物とも思える新しい形を置いて、町全体の見え方を変えて、全体を活性化したという方法が同じなのだ。

 パリでは、建築に必要な機能(エレベータや空調の設備など)を隠さずに見せることによって、これまでにない新しい建築を提示した。それに対して、メッスは箱(建築の空間)を布のような柔らかい皮膜(東京ドームの屋根のようなもの)で覆うことで、新しい形態を提示している。しかも、内部に照明を入れることによって、そのことがひと目でわかるようになっている。

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 このことは、新しくできた建築博物館(フランスの建築界が総力をあげたという大展示)では、大きなポンピドーの展示の前に、メッスもまた誇らしげに模型が展示されていた。ここに来ると、この国の建築家が考える建築とは何かとか、何に感動するのかがわかるような気がして面白かった。もう一度ゆっくり訪れたいものだが~。 

(あ、そうだ、ルーブルランスの紹介は、ここにはまだなかったのも、楽しい発見だった)

 

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