旅をしている人
田原 晋

詳しくはこちら

旅の記録, 201407フランス

IMG_2043

5)Tシャツ女の子集団

 エッフェル塔の前の広場、急に観光客でいっぱいになる。そこに新しいおそろいのTシャツを着た若い女性のグループがいて、署名活動をしている。確か昨日もいて署名をしたことを思い出した、ご苦労さんと声をかけたくなった。~つまり、こちらの感情は通常ではなかった。

 その一人が来てボードを目の前につき出しサインをせがむ。昨日もしたと振り払って行こうとするが、しつっこい。中国人かと言われ日本人だと答える。後で考えると、Tシャツの新しさに比べてボードは、やけに使い古したものだった、とてもアンバランスだった。

 ともかく振り払って歩く。しばらく行ったところで、肩にかけたバッグに手をやるとチャックがひらいている。中のサイフがない。やられた!こちらがボードに気を取られている間に、もう一人がその下に隠れたバッグに手をのばしたのだ!もう手遅れである。慌てて引き返してみたが、もう彼女たちはいない。たぶん大喜びしているのだろう。かくして、お土産を買うかもしれないと、ホテルを出る前にわざわざ追加した500eur、クレジットカード2枚などが消えてシマッタ。あれだけ注意していたのに。

 

 考えてみれば、若い人たちのおそろいのTシャツは、ボランティア活動というイメージを日本で刷り込まれている。ユニセフやあしなが育英会や各種の市場調査などなど~、つい心を許していた。よくぞまぁ、20年間世界を旅してきたコチトラから盗んだものだ、と悔しく思う心が。やがて、田舎ばかり旅している老人が、世界のパリにおのぼりさんして、当然のむくいを受けてしまった。当然だろう。それなのに自信だけあって、なんという思い上がりだったのだ。お恥ずかしい。

 20年がたって、旅のおっさんはスッカリ老いてしまった。まだ、突き飛ばされて、ころんだりしなかったのが、幸いと思うことにする。ヤレヤレ~、その夜は、さすがに寝れず、何度も何度も悔しかった。

 

付記)帰国後、ダイナーズのカードもストップ。Visaも使用はなし。海外ではサインでなく、専用機器への暗証番号の記入が一般的だから、それがわからなければ使うことができない。目下のところ、最も安全なシステムと言えるかもしれない。おかげで破産することなく、これからの生活が続けられる(お恥ずかしいことだが、ちと本気で心配したのであります)。新しいカードも数週間後、無事に送付されてきた。

 もう1枚、わが町の高齢者優待割引にカードも再発行してもらった。やはり失う人は少なくないようで、役所の対応などそのシステムもスムーズだった。ただし意図的な人手不足なのか、こちらは送られて来るまで大変に時間がかかった。

 

コメント(0)
トラックバックURL:https://taharasm.com/20141031214202.html/trackback/

ページトップへ