旅をしている人
田原 晋

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旅遊びの合間, 公開講座の旅

旅遊びの合間・公開講座7・

「移民とともにつくる社会・ドイツでの試み」 森明子 民博教授

 

(さて今回から民博の先生による講義です。3時間の講義を一言でまとめるという無茶なことですから、その内容より意図などをご紹介することになりそうです)

 現在、ドイツで移民の背景を持つ人たちの人口は19%。また幼児では3人に1人ですから、この比率はもっと上がっていくことになります。1位はトルコ人、そして旧ユーゴ、ギリシャ、イタリア、ポーランドの順。

 戦後の経済成長の中、国内の労働力の不足(ベルリンの壁で、東独からの流入は制限)で外国から労働力を受け入れました。最初は1年契約、単身者でしたが、賃金の安さから徐々に長期化。トルコ人は、ギリシャやイタリアに比べ真面目で評判がよく増えていきました。73年には募集停止しましたが、いったん帰国するともう来れませんので、家族の呼び寄せが増えていきました。

 国籍について、血統主義は親のどちらかの国籍に、出生地主義は出生した国の国籍になる考え方。2000年に改正され後者の考えになり、8年以上滞在すると国籍が与えられます。またドイツ語教育による統合が図られるようになりました。ちなみに日本は血統主義です。

 その流れを見ると、最初は経済発展というか国の発展のために欠かせない活動としてスタートしましたが、やがて移民の増大が社会に大きな影響を与えるようになり、その要望と、もともと国内に強くあった人権尊重の考え方によって、彼らの人権を尊重することも行われていきました。その歴史を見ると、その都度に最良の策を採用した結果によって、現在になったということができます。仕方なかったと言えるでしょうが、それによって、移民の人たちと一緒になって国を作って行くことになった(そうならざるを得なかった)と言えます。

 

 とはいえ都市の移民の家族生活を見ると、経済活動はドイツで、意識はあくまで出自のトルコにあるようで、子どもの結婚はトルコの人と、親は退職後に年金をもらって本国に帰るが、子どもたちはドイツに残る。閉鎖的なネットワークが目立っています。ドイツ人でありながら、ドイツ人にならない人々とも言えます。同時にそれに反対するネオナチといわれるような運動もあって、ますますの分断や孤立を引き起こす事態もあります。

 と同時にそれらを防ぐ運動が、試みられるようになって、いろんな住民活動が提案、実施されたりしています。講義では、その具体例がいろいろ示されました。そこが民博ならではのゼミと言えるのですが。

      結論として、ヨーロッパの都市は、移民家族を組み込みながら展開していく、それしか方法がないところに来ています。

 

 以上の話を聞いて、日本はどうか。それを考えてしまいます。現在は、人手不足のため移民受け入れしか方法がないように推進されていますが、それは数年後には彼らにどう住んでもらうか、共に社会を作っていかねばならない事態になります。そのことを予測していくことが欠かせません。

     グローバルな社会が、資本やモノが自由に移動する社会だとすれば、人もまたそのように移動する社会であることも忘れることができません。

 

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