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田原 晋

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旅遊びの合間, 公開講座の旅

旅遊びの合間・公開講座8

「中央アジアの社会再編とイスラーム」 藤本透子 民博助教

 

 中央アジアのカザフスタン、ウズベキスタンに5年間、留学された先生のお話(中央アジアには他にキルギス、タジキスタン、トルクメニスタン)。社会主義体制の移行(ソ連邦崩壊)後、人々がいかに社会を再編し復興したか、その生活はどのようなものかということが話された。

 

 中央アジア、南部(ウズベキスタンなど)はオアシス地帯で、シルクロードはここを通過していて、定住民が農耕などに従事、タシケント、サマルカンドなどの歴史的な都市も点在しています。北部は草原地帯で、遊牧民が居住しています(カザフスタンなど)。

 ソ連成立1917年によって、地主や家畜所有層などの富裕層が追放され、農業集団化(コルホーズ、ソフホーズ)で、遊牧民も定住化がすすんだ。その頃、家畜の大量死や飢饉などで、人口の42%が失われたとも言われています。そのソ連の崩壊後、ウズベキスタンでは、改革は漸進的で民営化はあまり進んでいませんが、カザフスタンは、民営化、協同組合、農民経営体(独立自営農)などと変化して、それぞれに経済の混乱や格差の拡大もまた起こっています。とはいえ厳しい自然の中、相互援助は欠かせなくウズべキスタンではマッハラ(街区)、カザフスタンでは父系クラウンなどの社会関係が浸透して、日常の生活が営われています。教育の水準は高く、文盲はゼロ、大学へいく人も少なくありません(ウズベキスタン)。

 

 その日常が、カザフでの生活体験を通して(夏の馬乳酒づくり、冬の肉の保存・ソーセージづくり)などが映像で紹介されました。冬は気温マイナス30度などの厳しい自然を受け入れて、たくましく生活されています。

 

 そしてイスラームも、民族的伝統として復興され、生活の一部となっています(社会主義体制下では、次第に消滅していくとされたが、実際は限定されながら続いていました)。とはいえ、カザフでは、1日5回の礼拝をする人は少数、断食をする人も増えてはいるが少数派です。しかしイスラームの祭日・人生の儀礼・聖者廟参詣によって教徒であることが意識されています。

 そのそれぞれが、映像で紹介されました。人生儀礼では、1)生後40日のお祭り(人間になる)。2)割礼祝(徹底している)。3)婚姻儀礼(家で、そしてモスクで)。4)葬送礼拝(土葬、墓碑を建設してクアルーンを朗唱。また天幕を建てて肉料理のもてなし、馬上競技が行われたりします。聖者廟参詣もさかんに行われています、その実例の紹介。

 

 現在、イスラームは世界的に復興していて、クアルーンや預言者の慣行への回帰が見られます。一方、中央アジアでは、民族の伝統の一部として再活性化。民族・地域的特徴の強いイスラーム、伝播以前からのアミニズムを含んだものまであって、社会を再編していく結節点になっています。

 教義ではなく、日常生活に着目することで、生きたイスラーム社会への理解が求められていると考えています。

 

 

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