旅をしている人
田原 晋

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旅遊びの合間, 201308~09 ブラジル

オスカー・ニーマイヤー回顧展        2015/08/24.

 東京都現代美術館で、オスカー・ニーマイヤー展をやっている(10月12日まで)とのことで、久しぶりに上京してきました。いえ、2年前彼の作品を見るために2週間ブラジルを歩き回ったこちらとしては、見逃すことはできません。

 

 会場構成がSANAAとのことでしたが、作品の選定にまで関わっておられるようで、とても好ましく思いました。とはいえ、やはり感じたことは少なくなく、何より沢山ある彼の作品から、たったそれだけ?というほどに厳選されていて、さすがと思うとともに、残念と思うこともまたありました。

 それはともかく、こちらの感じたことを少しだけ~。

 

彼が北半球の人だったら、建築の歴史は違ったものになったと思います。

 当然のことですが、ニーマイヤーの作品を実際に見た方は、他の世界を代表する建築家に比べてはるかに少ない。ですからそれは写真などを通して見ることになります。つまり映像を通して理解したものが、彼の建築となっています。というか、北半球の建築の状況の中に、それをあてはめて見てしまいます。そこで、写真ではわかりにくいことを、ひとつ。

 

彼の建築は、歩いて近づくことがメインになっています。

 

 私たちは、無意識のうちにりっぱな建築は自動車で近づくことを当然に思っています。でもニーマイヤーの建築の中央玄関へは、歩いて入ることが求められています。

 展覧会で、メインの展示となっているニテロイ現代美術館やイビラブエラ公園、ブラジリア大聖堂は当然だと思われるでしょうが、あのブラジリアの国会議事堂も、中央の玄関へは欄干のない広い歩道を歩いて行くことになっています。そこを人が通っているのを見ると、あらためて、この建築の大きさに気付かされてしまいます。

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 それは思っていたより、はるかに小さいというか、人間サイズの建築です。地階を含めて3階建てでしかありません。ちなみに自動車で行くと、建物の端っこの地階に着くようになっています。また議事堂にそびえている2本のビルは、厚みも長さも建物としてはどう使うのかなと思えるほど小さく、視覚用に用意されたものだと思いました。

 

 またブラジリア大聖堂は、地下に降りて行く暗い斜路をしばらく歩いた後、突然ガラス張りの大聖堂が開かれると言う仕組みです。

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     ニテロイ現代美術館は、その全景を海から遠望するポイントで見ていると、入り口の斜路がこちら側に回っているために、そこを歩く人間が建物に比べてはるかに大きくなって、巨人が小さな建物に近づいているようでちょっとびっくりします。

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 いずれにしろ、どれも相当な距離を自分で歩くか、車椅子で押してもらわないと入れない、そういう設計になっています。

 このことは意外に、私たちが建築を見る時に、忘れてしまっていることのように思います。現在話題になっている、国立競技場についても、そのことを知っていたら、もっと違うものが選ばれたのではないでしょうか。~実は、SANAAの作品も、提案され最後まで残っていて、公園のようなところを歩いていく案であったように思います。

 

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