旅をしている人
田原 晋

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旅の記録, スリランカ160295~25

スリランカで・2    ペラヘラ祭り

 出発の日、朝食をとっていたら、一人の日本の女性が入って来られた。腰のポシェット見ただけで、瞬時にそう思った。こちらと同年輩、どうもお一人のようだ。声をかけてお話を伺うことにした。

 なんとコロンボで2泊だけの、旅とのこと。九州の方、親の介護をしていて大変なのだが、やっと時間を取ることができた。今晩、ペラヘラのお祭りがある。それを見に、それを見るためだけで来ました。飾り立てた象と、踊りの行列がある、すばらしいから、ぜひご覧になるといい。遅い出発なら、それを見てから行かれたらいいと強く勧められ、それを知らないこちらを逆に憐れんでくださった。

 そう言えば、通りに観覧席がしつらえた場所があったし、来る時の機内誌でも紹介されていたが、それが今日とは知らなかった。象の行列の祭りは、インドのケララ州で見た、そのスリランカ版なのだろうと、勝手に思った。

 

     それにしても、それを見るためだけに、はるかスリランカまで来るとは、すごいことだ。その決心と行動力に、心底感心した。失礼だが、おおよそ、そんな旅をなさる方にはまるで見えない。今日は、10時にガイドの方が来て、まずバワ(スリランカの建築家)の住宅を見て、それから夜のお祭りに行くことになっているとのこと。その行動力と興味が広がるさまに、ほんとうに感心した。

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 ちょっと悔しいこちらは、もう一度観覧席のあった場所に行き、その周辺を歩いてみた。祭りの寺は、すぐわかった。すでに読経と、ラッパと太鼓の演奏が流れ、沢山の善男善女がお参りをしている。観光客もいる。こちらも靴をぬいで入る。迷路のような建物は2層にも3層にもなって、お参りをする場所が沢山ある。濃いお化粧をした人、仮面の人もいて、音楽と香料が流れ、境内がすでにこの世ではない別世界になっている。象を飾るであろう衣装?は何体か見ることはできたが、象はいなかった。

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 夜の10時過ぎ、空港の待合室で、テレビが祭りの中継をしていた。横長の太鼓を肩から下げて両手で打つ、それにラッパの音が重なり、若者がダンスをしている。逆立ちや回転など、それはアクロバッチックで激しい運動だ。そのグループごとに着飾った象がいて先導している。確かに大変なお祭りだ。このお祭りのために生きているような方が、何人もいらっしゃるだろう、それはよくわかる。ブラジルでも岸和田でも、そういう方はいらっしゃる。

 でも、真っ暗な闇の中から現れてくるそれは、もうこの世のものではないような、そして単調な音楽はどこかとても淋しくて、自分自身すらどこかこの世から離れたような気分になるのだろうと思った。こちらは、その気分を神戸大震災後の最初のルミナリエで感じたことを、唐突に思い出した、もう23年も前のことなのに。それは現在のそれでは信じられないほど、ほのかな明かりでまた音楽はなくて静かでした。

 

 女性は、無事にお帰りになって、また何時もの生活になられたのだろう。それはそれで、いい人生なのだろうなと思う。九州の農家で88才の母上を介護をなさっている、それ以外のことは何も聞かなかったことをちょっと残念に思っている。

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