旅をしている人
田原 晋

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本の旅 の記事一覧

旅遊びの合間, 本の旅

 

「トランプ自伝」ちくま文庫                            2017.01.

 トランプ大統領が就任して、さまざまな話題が飛び、彼を知るための書籍も、多く出版され本屋さんに積み上がっています。その中で、ご本人が書いた自伝があったので、文句なしにそれを読むことにしました。たとえ嘘があるにしても、それは本人が意図をもってついたものだろうし、他人が類推したものよりはるかに真実でしょう。予想通りそれは、とても面白かったし、ナルホドと思いました。

 そこで感じたことをまとめてお知らせすることにします。

~ここに発表するか迷っていましたが、1か月たって、やはり載せることにしました。

 

1・彼は世界の富裕層1%の方としか、つきあっていない。そのやり取り(商売)の中で出てくる、アラブの人や日本人中国人が彼の知っているというか、想像できる人たちなのだ。

2・だから他の人のことはまったく見えていない。(空港で抱擁している)7か国の人それぞれにも人生があり、愛も喜びも幸せも不幸もあることが、どうもまるで想像できないようだ。

3・だが大変に賢い。対応力もあって、他の競争相手(富裕層)にはない、現場のことまで知ろうとするし、それで商売(建設などの事業)をするから、成功している。

だから、これからの政治でも同じ態度を取るだろうことは、想像できる。まだ知らないだけだ。

4・美や芸術へのセンスは、大変に高い。単なる流行には左右されない見識を持っている。例えば、ポストモダン全盛期、それをコンクリートで造る回顧趣味は好きではないと、古い外観をそのまま残す方向へシフトしている。モダンについても同じ(成功するべく建てられたトランプタワー)。

5・家族もまた、そのように作り上げている。奥さまや娘さんの実力(経営能力や美へのセンス)も、見事なものだ。

~このあたりはちょっと気持ち悪いけれど。

6・つまり、それだけ(自分に見えたものだけ)を見て、それだけしか見なくて、現在まで来ている。

 それ以外を、見ようとしない、見る必要がないから成功できた。

 と、以上のように思えば彼の言うことが、わかるような気もする。

7・例えば、100以上のホテルを持つホテルチエーンが、たった2つのカジノで利益の大半を上げているのを知ると、文句なしでそれに参入しようとする。そこで、それを利用する人に、どんな人生が生まれるかなどは、まるで考えない、というか思いつきもしない(これは日本のどこかの知事もまるで同じだが)。

8・ところが現在、見えなかった、まったく見る必要のなかった相手から、文句を言われるようになった。

 つまり、彼は今、あらためて世界を知らされ、見ざるを得なくなっている、そうせざるを得ない場に立ってしまった。さて、これからどうなるか、これからが本番だろう~

9・とはいえ、これまでの生き方(商売の方法を見れば)その対応力はあるし、それで成功をしてきた。

10・つまり、これからの勉強次第のように思う。豹変するかもしれないし、その可能性は大いにある。意外に、すばらしい大統領になるかもしれない。

~これからをよく見ていきたい。どちらにも転ぶ可能性があるのだから~。

 

11・ともかく以上を知って、こちらとしては、4年後の中間選挙を待ちたい。そこでアメリカ国民がどんな判断をくだすのか。

 初めて、もう4年はなんとしてもボケないで生きたいと思っています。そう思わせてくれたことに、何より感謝しています。

(東京オリンピックなんて、見たいともなんとも思わないけれど~)

 

 

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本の旅

2.本の旅・加藤典洋「人類が永遠に続くのではないとしたら」

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 旅の前から読みだして、やっと終わりました、いえ終わってからも随分時間がたちました。途中わからないことも沢山あったけれど、面白かった。というより、世界のこれからについてまるで見えなかったことに、やっと希望というか、あぁそうなっていくのかというひとつの方向を教えていただいた。生きていてよかったというか、これで、まぁ安心して死んでいけるな、と思いました。

(ちょっと脱線。これまで本をいくつも読んできて、誰も言わないけれど、わからないけれど面白いという本があることに気付いています。それでも読んでいいのだというか、そういう、わからないけれど面白いという感想。そのわからないままでも、この本はいいと人にすすめることもまた大切だ、と思うようになりました。世の中、わかりやすさだけが、ほめられているように思いますが、これはあまりいいことではありません。)

 

 さて本の紹介。この地球に限りがあることは、みんな知っています。また未来の人類は地球を捨てて宇宙に移住するのだとは、もう誰も信じることができません。といって、地球の温暖化が進んでいて海水面が高くなるとか、炭酸ガスの濃度が上がって住めなくなる、という意見はあるけれど、ほとんどの人は今のままの生活を続けているし、生き方を突然変更するなんて不可能だと思っています。

 最近亡くなった天野祐吉さんは「成長から成熟へ・さよなら経済大国」という本を書いて、江戸時代に帰ればいいとおっしゃったが、ナルホドとは思うけれど、それはムリだろうと思ってしまいます。IMG_0001

 

 では実際、人間はどうするのだろう。この本は、こちらが知る限り初めて、納得のいく未来を予測してくれました。結論から言えば、それは人間自身の考え方が変わって行くというもの。経済発展とは違う方向へすすんで行くことを、人間自身が望むようになっていく。今はまるで信じられないことだと思うけれど、すでにその兆候があることを示してくれていて、そうかもしれないと思わせてくれます。

 例えば、IT関連でマイクロソフトのジョブス氏は儲けたお金を社会貢献に使っていますが、フェイスブック以後の企業家は、もうお金儲けすら望んでいないようです、などなど。実際、経済発展が何時までも続いたら、困るのはわかっているのですから。

 

 これまで人間は、脳(の中の前頭葉)の進化によって発達発展していくものだと思われていました。未開から文明へ、それは一直線に進化するものだと考えてきました。でも、どうもそうではない、という考え方が出て説得力を持ってきました。なにより、人間には、植物的な部分(自分の意志では、どうにもできない心臓や胃腸の機能)があって、それを認めると、知識の進化(結果としての経済の発展)だけを人間らしい行為と考えるのは誤りであることがわかってきました。それは当然のように、思考に変化を与えていくことになるのだというわけです。

 加藤さんは、それを「することができる」から「することも、しないこともできる」と考える(選ぶ)ようになることだというのですが。

 

 いずれにしろ最後は、地球の自然変化と、人間の変化の追い駆けっこになりそうだけれど、少なくも映画の「猿の惑星」(人間が猿の奴隷になる)や「渚にて」(原爆によって人類がいなくなる、そこにワルチング・マチルダの曲が流れて、映画が終わる)になるという未来よりは、納得のいく世界が描かれています。ともかくこれを読んだことで、久しぶりで高揚した気分になることができました。

 

 そしてまた当方には、三木成夫、見田崇介(社会学)、吉本隆明(アフリカ的)、親鸞や多くの外国の学者さんなどなどの、絶賛されるけれど難解でもうひとつ理解できなかった著作の、すばらしさの意味が、やっとちょっとだけ理解できるような気になれたことも、またうれしく、ありがたいことでした。

 

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本の旅

日本文化の論点 宇野常寛  ちくま新書

前回の文章で最後に唐突に、内田樹さんを引き合いに出したのは、この本のことを書こうと思っていたからだ。
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最近目覚ましい活動をしている宇野常寛さんが、やっと印刷された文章で自分の立ち位置を紹介した。彼の挑戦的な言説が、なぜ生まれたか、何に向かって怒っているか、ようやく理解できた気がする。
1978年生まれならではの感性であり、分析であると感動した。上の世代としては、それを真面目に受け止めねばならない。最近のこの国は、思考することを放棄する傾向があるのだから、彼のような人が出てくるのは大変にうれしいことだ。

とはいえ疑問もある。ネットでの情報交換が社会を動かす中心的な役割を負うようになることは、類推できるけれど、アニメとAKB(夜の文化)の成功だけで、これまでの文化(昼の文化)と対峙させようというのは、やはり無理がある。
長い人類の歴史の中で生まれた文化に対して、もう少し敬けんであっていいのではないだろうか。あなたの言う昼の文化自体が、すでに平面的な広がりを指向している。音楽も書籍もすでにネット化と切り離せないし、SANAAの建築など平面的な広がりを建築化していると見ることができる。

安藤忠雄にいた二川幸夫のような方が、宇野常寛にはいないのだろうか。それは大沢真幸でも宮台真司でも違う、せめて内田樹か高橋源一郎ではないだろうか。そんなことを思ったりした。

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本の旅

[3日もあれば世界旅行 吉田友和  光文社新書]を読んだ。

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働きながら上手に海外を旅する「週末海外」という3日または4日もあれば海外旅行を楽しめるという提案。ご自身の経験から語られているので、とても説得力があるし、これはとてもいい提案だと感心した。彼は1976年生まれ、こちらの息子の年代だ。

たっぷり時間のある定年のこちらから見ればなんと慌ただしいと思うけれど、ともかく気軽に海外旅行を楽しむことはいいことだし、これが増えることは、長く変わらないこの国のサラリーマンのライフスタイルに変化を与えることになるに違いない。

とはいえ読んでいて、ただ海外に行くことだけが目的のマニアかとちょっと心配になったけれど、現地でマラソンをなさったり植物園を訪ねたりと、しっかり旅をなさっている。だからきっと、予定を決めないで旅をする良さもまたご理解いただけるだろうと思っている。

 

こちらも、早速にそこでご紹介いただいているいくつかのソフトをトライするつもりだ。それにしても、ただ旅をするだけのために、これだけのノウハウが必要というのも、時代は変わったものだ。

 

 

 

つい最近、内田樹さんが朝日新聞に長文の寄稿をなさった(2013年5月8日大阪版)。何時もシャイな発言をなさる氏が、これだけの長い文章をわざわざ投稿なさっということは、これは、どうしても伝えたいと思われたことに違いないが、それは「この国が、資本(企業利益)と言う国を越えたものに売られようとしている」というもので、ほとんど方にはその真意は伝わらなかったのではないかと思うのだが~。

旅をこのようにノウハウづけにすることもまた、内田さんが心配なさったことのひとつなのだろうなだと、思ったりした。

 

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本の旅

  また面白い本を見付けてしまった。副題に「若者と観光メディアの50年史」とあるように、若者を中心としてきたこの国の海外旅行の状況をメディアと関係づけて見事に切り取ってみせている。表紙裏にある紹介文をそのまま書き写してみる。
「最近の若者は海外旅行に行かなくなった」といわれて久しい。二十代の出国者数は1996年にピークを迎え。十年あまりで半減した。それを若者の変化だけで問題化するのは正しくない。海外旅行の形も、大きく変わってきたのである。本書は「何でもみてやろう」「地球の歩き方」「深夜特急」「猿岩石」など、時代を象徴するメディアとそれらが生まれた社会状況を分析し、日本の若者が海外をどう旅してきたかを振り返る。そして現在の海外旅行が孕む問題の本質を、鮮やかな社会学的アプローチで明らかにする。

  著者が「地球の歩き方の歩き方」の共著者であったことを知り懐かしく思ったのが、こちらはそういう本を読むことで旅にあこがれ、やっと自分の時間を持つことができて旅をスタートさせた時期が、ちょうど若者の海外旅行が減少していく中であったようだ。道理でと思い当たることも少なくないが、旅とは本来的にその時代の言説や風潮、つまり日常に反抗することで出かけるものだという本質は失いたくないものだ。

また最近の海外旅行で欠かすことのできない現象、例えば、定年退職者を初めとする高齢者の旅行、おばさんなど女性たちのツアー、大学の観光学科(当然、若者が学んでいる)、観光が国の重要政策になっていること(観光客誘致政策)、などについても目配りして欲しかった。

ともかくたまたまのことだがこのブログで紹介した、加藤仁「定年からの旅行術」(現代新書)、高城剛「サバイバル時代の海外旅行術」(光文社新書)と合わせた3冊がお互いを補いあって、この国の現在の海外旅行を語っているように思う。

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